夜の祝福あれ

Open App

消えた星図

宇宙歴3125年。人類は銀河系の外縁部まで進出し、星間航行は日常となっていた。

惑星アステリオンの天文研究所では、ある異変が報告された。数千年にわたり記録されてきた星図の一部が、突如として消失したのだ。恒星アルファ・セリス、ベータ・ノクス、そしてガンマ・ヴェイル。どれも航行の基準点として使われていた重要な星々だった。

「星が…消えた?」

若き天文学者リア・カンパネルは、消失した星図を前に呆然としていた。データの改ざんも、観測ミスも考えられない。星図は量子記録装置に保存され、改ざんは不可能なはずだった。

リアは調査のため、宇宙船《ノクティス号》で消えた星々の座標へ向かった。しかし、そこには虚無が広がっていた。星の残骸も、ブラックホールも、何もない。

「まるで…最初から存在しなかったみたい」

航行AIのセドリックが言った。「リア、星図の消失は物理的な現象ではないかもしれません。時空の歪み、あるいは…情報の改竄」

「情報の改竄?誰がそんなことを?」

セドリックは一つの仮説を提示した。星図は宇宙の“記憶”であり、何者かがその記憶を書き換えたのではないか。宇宙そのものを“編集”する存在がいるとしたら?

リアは、古代文明の遺跡が眠る惑星ヴァルカスへ向かった。そこには“星の記録者”と呼ばれる存在の伝承が残っていた。彼らは宇宙の構造を記録し、必要に応じて“修正”する力を持っていたという。

遺跡の奥深く、リアは一つの装置を見つけた。星図を“再構築”するための鍵。彼女は装置を起動し、失われた星々の記憶を呼び戻す。

そして、星々は再び夜空に輝いた。

だが、リアは知っていた。星図が消えたのは偶然ではない。誰かが、何かを隠そうとしていたのだ。

「星図は戻った。でも、真実はまだ闇の中」

リアは《ノクティス号》に乗り込み、再び宇宙へと旅立った。消えた星図の謎を追って。

お題♯消えた星図

10/16/2025, 2:50:58 PM