華音

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海の底

眩しい。
朝から浴びる太陽も、
通学路にある湖の水面も、
大きなランドセルを背負った小学生も、
何もかもが眩しい。
鬱陶しい。
教室という空間に響くクラスメイトの声も、
容赦なくじゃれてくる生徒Aの手も、
生きた年数だけが違うだけで上からものを言う教師も、
何もかもが鬱陶しい。
帰りの時間になることだけをひたすらに願って、ただ大きいだけのリュックを背負って帰路に着く。
見慣れた家が立ち並ぶ場所に着くと、ようやく息ができた。日陰ができて、吹き抜ける風が気持ちいい。
扉を開けて、2階へと上がり、電気をつけた。
ここだけが、自分の居場所。
締め切ったカーテン、無機質な白色の電気、小さなベッド、机に置かれたゲーム機と少しの本。
今流行りのゲームなんてない。
みんなが好きな作品もない。
全部、自分好みの物しかない。だからここでしか息をできないんだ。
ここでなら、もう何も気にしなくていい。上下一緒のグレーのスウェットを着ていたって、髪がボサボサだって、誰も何も言わない。風通りが死ぬほど悪くても、空気がなんとなく重くても、良かった。むしろ心地いいくらいだ。
片手で持てる布みたいな荷物を投げ飛ばし、椅子についた。
私はそう、深海生物。
流行りの服は着ない、
流行りの食べ物は知らない、
流行りのアニメは見ない、
好きな物だけを小さく集めて、自分だけの居場所を作っている。皆が知らない海の底で。
私は、そう、深海生物。

1/20/2026, 1:15:22 PM