あなたのことを忘れない。
そう思うのは簡単だ。
誓って、胸に刻んで。そうすればこれからもあなたと共に生きていけるから。
それでも残酷な時の流れは、心の形を変えていく。
永劫変わらぬと信じた愛も、痛みも、濁流に押し流されて。過ぎゆく年月に呑み込まれ、泡沫の中に溶けていく。
忘れぬはずのあなたを、思い出すことが増えていく。
思い出すことも、難しくなっていく。
そうして散った誓いの数だけ、この花は咲くのだろう。
青紫の花弁は記す。
誓いがいつしか夢と消えても、忘れまいと願った事実は変わらない。
【勿忘草】
2/3/2024, 5:14:24 AM