後者の入り口で、雨が止むのを待っている生徒。……俺の元カノ。中一から付き合って、高三になった先月別れたばかり。理由は将来が不安だから、だったような気がする。友達に戻りたいって言われて、三日間話し合って俺が折れた。
「…………傘、忘れたのか」
「……うん」
「…………貸してやろうか?」
「……ううん、走って帰る」
「馬鹿、風邪引くだろ」
「………………うん」
「…………ほら、貸してやる」
「……返すのだるい」
「………………一緒に帰るか」
「……………………うん」
変な関係性だとは思ってる。普通元カノを家まで送って行くなんて有り得ないだろう。別に喧嘩別れした訳でも価値観が合わなくて別れた訳でもない。ただコイツにあまりにも別れたいと言われて心が折れた。
コイツの家が近づいてくる。やっぱり俺は、まだ。
「……なぁ、ウザくてごめん。やっぱ俺、」
「ごめんなさい」
「…………嫌いになったなら嫌いってはっきり言ってくれ」
「…………すき、好きだよ、まだ大好き」
「じゃあ何で」
「……送ってくれてありがと。出会えて良かった」
雨とアイツの涙が混ざって頬をつたる。ばたりと閉まった扉を開ける勇気が俺にはなかった。
1ヶ月後。急にアイツの両親が俺の家にやってきた。なにか恨まれるような事……したかもしれない。未練がまし過ぎた?付き合っている時はきちんと丁寧なお付き合いをしていたはず。何を言いに、今更。
「……昨日、𓏸𓏸が旅立ったわ。あの子の事最後まで大切にしてくれてありがとう」
「………………え?」
……急死だったらしい。元々難病を抱えていて、昨日の夜体調が急変してしまったとの事だ。俺と別れると言ったのも、自分の寿命が短いと分かっていたからなのだろう。
「これ、貴方にあの子から手紙」
アイツの両親から渡されたのはきちんとテープで止めてある封筒。表紙に俺宛と書いてある。ご両親が帰られた後、びり、と封を開ける。
××へ
××と出会えてよかった。最後に相合傘出来て嬉しかった。本当にありがとう。
大好きでした。素敵な人を見つけてね。
手紙にポタリと水滴が落ちた。
『相合傘』
6/19/2024, 10:23:09 AM