俺は勇者。
仲間を集めて旅をして、ドラゴンと戦って、人々を命懸けで守って。
生まれた時にはそれが当たり前で、毎日毎日、世のため人のために戦ってきた。
「勇者様万歳!」
「ほんと、勇者様がいてくれて助かるわぁ」
感謝されて悪い気はしない。
人を助けて感謝される。それが勇者だから。
でも、これが俺の本当にやりたいことなのだろうか。
俺は、勇者という運命から、一生逃れられないのだろうか。
ある日、仲間の戦士に相談してみた。
「なぁ、今日だけ勇者と戦士、交換しない?」
「はぁ?何言ってんだよ。変なキノコでも食った?勇者はお前しかいないだろ」
「勇者も戦士も、戦うことには変わりないからさ、やろうと思えばできなくもないんじゃないか?」
「いやぁ、無理。俺にお前の代わりは務まらないって。これからも頼りにしてるぜ、“勇者様“」
そうか、俺はこの先もずっと勇者なんだ。
それ以外の何にもなれない。
「勇者様がまた村を救ってくれた!」
「勇者様に感謝を!」
人々の歓声が、感謝の言葉が今日も聞こえる。
今日も“勇者な自分“に疑問を抱きながら、逃れられない現実を生きる。
お題『逃れられない』
5/23/2024, 12:54:01 PM