ジャングルジム
子どもの頃、ジャングルジムのてっぺんに登ってはしゃいでいたあの子。
仲間に揉みくちゃにされながらのやんちゃな笑顔が眩しくて。
私はそんな遥か頭上のあの子をことある事に見上げていたっけ。
足が速くて、運動会では毎年リレーのヒーローだった。
あの子が授業中にふざけたとき、叱った先生の顔がどこか嬉しそうだったのは、私の気のせいなんかじゃなかったはず。
あの子が大声で私の名前を呼ぶたびに、
うしろからポニーテールを引っ張るたびに、
通りすがりにペンケースを持っていくたびに、
私が俯いて何もなかったふりをするのは、あの子が嫌いだったからじゃない。
周りのみんなから注がれる私への視線が痛かったから。
ある夏の終わり。
すっかり陽が落ち切ったある日。
あの子はうちのチャイムを押した。
不機嫌に黙って差し出された透明なプラスチックの箱。
そこには、私が好きなキャラクターの消しゴムが詰め込まれていた。
「くれるの?」
そう聞いた私に、あの子はコクリと頷いた。
「〇〇くん、お父さんのお仕事の都合で海外に行くことになったらしいわよ。あなた仲良かったから寂しくなるわね。」
後日、母の口からそう聞いたとき、あの子はもうすでに旅立ったあとだった。
小さな町の公園でジャングルジムを見かけるたびに思い出すのは、あの子の陽に焼けた笑顔と懐かしさ、それと胸を刺す微かな痛み。
あの時のジャングルジムの少年は今も元気にしてるかな?
お題
ジャングルジム
9/23/2024, 10:02:10 AM