心臓を食べたい。長田弘の詩に詠われたシャシリックを食べようと思ったが、結局思っただけで何もしなかった。
鮫の心臓も食べられるらしいから、それも食したいところだ。もうかの星と呼ばれている。心臓に星の名を与えられていて、私の食指が動く。この世界では、海の中を泳ぐ流星も食べられるのだ。空から落ちた金平糖みたいな甘い星も魅力的だが、水圧に押されて生命としての限界までに達し潰えた真っ赤な星屑も実に蠱惑的である。
何事も冷静でいなくてはならないと感情や心を削ぎ落としてしまった私の冷め切った心臓には、熱すぎる心臓の血潮が必要なのだろう。いっそのこと、死ぬ前に自分の心臓をくり抜いて、息絶える寸前の私の口に当てて欲しい。鼓動の熱さに目が覚めるか、それとも心音の温もりに瞼を下すか。ドキドキの瞬間だ。
(250730 熱い鼓動)
7/30/2025, 12:22:43 PM