【愛する、それ故に】
3年前に出会ってから
あなたと私はすんなりと恋人同士になった
まるでそれが自然な形であるかのように
けれど私はあなたと過ごすうち
あなたの興味が私から
別の人へと逸れているような気がしていた
休日に顔を合わせても
私の話を聞くよりもずっと
友達や同僚など別の人の話を多くするのだ
その中には異性も含まれていた
あなたを愛する、それ故に
私の不満はじわじわと溜まっていき
あなたに一度もぶつけることなく膨れ上がっていった
女の勘というのは自分の意思に関係なく
あるとき突然鋭くなるものらしい
普段のようにカフェで話しているとき
私の話を上の空で聞くあなたを見て
ふと、この人は
私ではない人を好きになったんだなと気づいてしまった
ついさっき
同僚の女の人の話をしているときは
あんなに楽しそうだったのに
目の前の私のことには
まるで興味がないのが全身から伝わってくるのだ
この人は私を嫌いになったわけではない
まだ、そこまでではない
でも
私以上に好きになった人がいるのだと
分かってしまった
そして翌日
あなたを愛する、それ故に
私は目を赤く腫らしながら
電話で別れを切り出した
他に好きな人ができたと嘘をついて
あっさりした女のフリをして関係を断ち切ったのだ
愛しているからこそ、苦しすぎた
知ってしまったからこそ、側にはいられなかった
どれだけ好きでも
あなたの中で私が一番ではないのなら
あなたに捨てられるその前に
私はあなたを捨てる
さらに苦しい想いをするくらいなら
笑って別れたかったから
10/8/2025, 1:32:32 PM