確かに自分の意志でここへ歩いてきたはずなのに
「帰り方が分からないんです。」
ふと顔を上げると霧に包まれた世界にいて、かすかに奥で信号らしき光が見える。
大きな音がしたかと思えば頭上で鯨が泳いでいる。
一体ここは何なのか、
[私はいったい何者なのだろうか]
[そもそもここに生まれてきた意味が存在するのか]
ここあたり一帯を反響させて鯨がしゃべりはじめる。
不思議と恐怖はなかった。
[どうして生きているのか]
鯨はただしゃべり続ける。
まるで淡々と仕事をこなすように、
[私のすすむべき道は]
より一層響いてめまいがする
だけど、多分だけどこれに答えなきゃ帰れない。
でもわからない。
「そんなのしるわけない」
[そんなのしるわけない]
霧の中で赤の光が青に変わった。
6/9/2024, 3:50:04 AM