【どうして】
窓ガラスの向こうを、尾を引いて流れていくネオンの光。頬杖をついてぼんやりとそれを眺めていれば、ポンっとペットボトルが放られた。
「ちょっと、運転集中してよ」
「このくらいでミスるほど下手じゃない」
運転席でハンドルを握る男は淡々とそう返してくる。手の中のペットボトルのラベルを見れば、僕の好きなメーカーの無糖のストレートティーだった。相変わらずそつがない。文句をつける隙すらなくてちょっとムカつく。
気もきくし頭も良いし、コミュ力が極端に低いわけでもない。僕なんかの秘書なんかやらなくたって、いくらだって生きていく方法はあるだろうに、どうしてコイツは僕の差し出した手を取って、いまだに僕のそばに立ち続けているのだろう。
(なんて、わざわざ質問するのも腹が立つから、一生聞かないんだろうけどさ)
少しだけ悔しさを覚えながらペットボトルの蓋を捻り、中の紅茶をごくりと飲み干した。
1/15/2024, 6:40:59 AM