月が凪ぐ夜

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世界は色とりどりの鮮やかな色で溢れている。
そして僕の世界は、とても賑やかだ。

黄色はとても明るく、眩しい光で辺りを照らす。
青は果てしなく雄大で、それでいてとても深い。
緑は思慮深く、そして新緑の芽吹きを優しく掬う。
紫は一見とっつきにくいが、以外と拙さを見せる。
そして、赤は――…。赤は…。

がらりと教室の扉が開く。
「なんだ、こんなところにいたのか?」
教室の片隅に座るボクにさして驚きもせず、そしていつものようにボクを見つける君は、君がボクの世界をいかに色づけたのか知っているのだろうか。
「みんなが待っている。早く来い」
「…はい」

そして赤は、何よりも強烈なファーストインプレッションを植え付け、ボクに滾る炎の熱さを知らしめた。


「黒はすべての色を飲み込み、包み込み、調和する」
みんなと合流する道すがら、唇に指をあてて微笑みながら君が言った。
…どうでもいいけど、勝手に心の声を聞かないでください。


【色とりどり】

1/8/2024, 2:15:52 PM