真夜中に空腹で目を覚ました私は、こっそりと布団を抜け出してキッチンへ向かう。何か無いものか、と冷蔵庫を開けると彼が買ってきてくれたケーキの残りが入っていた。その一切れをお皿に乗せて、いざ食べようとしたところ、何者かにお皿を取り上げられた。
「おや、こっそり夜食なんていけませんよ?」
後ろを振り返ると、さっきまで寝ていたはずの彼が私のケーキを載せたお皿を持って立っていた。怒っているわけでもなくクスクスと笑うようにそう言っているあたり、私の健康を気遣っているというより抜け駆けはずるいと思っているような感じだった。
「しょうがないじゃん、お腹空いちゃったんだし。何なら一緒に食べてもいいんだよ?」
「仕方ないですねぇ、一つだけですよ?」
「ふふ、これであなたも共犯だからね」
そうして二人分のケーキを並べて、夜食を食べながら二人だけの秘密の時間を楽しんだ。あっという間にケーキを一つ食べ切ってしまった私がもう一つ持ってこようとした時は、流石に彼に軽く叱られてしまった。
テーマ「一つだけ」
4/3/2024, 10:30:40 AM