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 街へ。
 ぼくらには一つの目標がある。
「期末、どう」
「中間考査よりは落ちたけど」
 まあ、それなり。
 彼女は、はあ、と息を吐いた。ぼくはその二酸化炭素混じりの空気を吸う。駅のホームには誰もいない。次の列車まであと45分。呼吸するだけの45分だ。
「札幌?」
 掲示板の札幌行きの文字をぼんやりと眺める。
「せめて、ね」
「いいね」
「きみは出るんだっけ、ここから」
 出るよ、と呟いて、彼女の手元の英単語帳に目を落とす。この英単語、期末考査で意味を間違えたところだ。
 彼女が息を吸う。
「生きていく上でさ、」
 勉強って役に立つのかな。
 唐突な話の転換に、思わず目を合わせて、はは、と笑う。
「なに? 悩んでるの?」
「そんなんじゃないけど。そういうこと考えない?」
「考えるけど」
 でも。それでも、ぼくらの手札は勉強しかなくて。とりあえず、息のしづらいこの町から出て、街へ。

1/28/2023, 11:22:41 PM