もち

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 実は、私は少し朝が弱い。

 早朝、アラームを止めて、寝ぼけ眼で時計を確認する。まだ時間に余裕はある。
 とぼとぼとベットから抜け出し、流しで手を洗い、食パンをトースターに入れて、洗面台へと向かう。冷たい水を浴びてようやく、私は覚醒する。
 キッチンに戻り、焼きたてのバターをトーストに塗る。私は分厚くてふわふわの生地を好んでいるけれど、あの人はそうではない。ペラッペラの八枚切りをカリカリに焼くのが好きらしい。
 情報番組をBGMに食器を洗う。ついつい、洗剤を贅沢に使ってしまうのが私の悪いところ。ふるさと納税の返礼品が一気にきたせいで、しばらくなくなる気配がないんだもの。
 制汗シートで肌を拭き、通勤用のブラウスに腕を通す。仕事に行くだけなのに、アイメイクをきちんとしてしまうのは、私が浮かれているせい。ややきついウエストは、美味しい食事に連れて行ってくれるあの人のせい。
「行ってきます」
 返事はないけれど、言葉に出すことにしている。なんとなく、スイッチが入るような気がして。

 マンションから出て一本道。職場に向かうにはバスに乗って、それから電車に乗り換える。浮ついた気分で歩いていると、バス停に見えるあの人が、私に手を振る。
 私はここからバス停までの一本道が、一番好き。
「おはよう」
 忙しそうにしているあの人との少しの逢瀬を大事にしているから。

7/3/2024, 10:43:03 PM