「どうか子供を授かりますように」
一人、神社で神様に手を合わせる。
病院にも通い、手は尽くしてきた。
あとはもう神様に縋るしかない。
4月に入り、だいぶ春めいてきたがまだ少し肌寒い。
本殿にはやわらかい日の光が差し込んで、塞ぎ込んでいた気持ちも和らぐ。
お昼時の空には、明るい雲がふわふわと浮かんでいる。
「ママ、おなかすいたぁ」
突然の子供の声に振り向くと、若いお母さんと小さな女の子。
「あ、すみません!こら、お参りの邪魔しないの」
お母さんが慌てて言った。
「いいんですよ、お嬢ちゃん、いくつなの?」
3本指を出して、「さんさい」と恥ずかしそうに答える。
3歳かぁとその子を見ていたら、突如、私の脳裏にその小さい女の子が小学生になり、少女から若者に、大人の女性に、成熟し、そして老年期へとその子がたどるであろう姿が浮かんだ。
小さな子供連れを見ると、いつもは羨ましさでいっぱいになってしまうのだが、今日はまったく違う感情が湧き上がっていた。
「お嬢ちゃん、幸せに、なるんだよ」
いつの間にか涙目になってそう言う私に、「ありがとうございます」と恐縮しながらも嬉しそうな笑顔を残して帰っていったお母さんと手を振る女の子。
私は再び神社の神様に向き直り、
「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
ふわりふわり、境内に咲く桜の花びらが静かに私の上に舞い降りる。
3/31/2026, 1:09:37 PM