貴方は誰よりも口下手で、それなのに文章を書くのが大好きでした。
でも、そんな貴方にたくさんの苦労が降り注いで、いつしか口を全く開かなくなってしまいました。
心配した私は、しばらくお互いに手紙を書き合って、放課後に交換し合わないかと提案しました。
そしたら、貴方は嬉しそうな顔をして、元気よく首を縦に振りました。
それから、手紙を書く日々が始まりました。
最初のうちは、家を出る前に書いていたのだけれど、段々と授業中に書くようになっていき、いっかいだけ先生に見つかって注意を受けたときは、最近滅多に笑わなかった貴方を、笑わせることができました。
その日、貴方から受け取った手紙を開くと、
「必死に文章を綴っている貴方は、とても綺麗で、恋に落ちそうでした」
なんて、かくかくした字で、そんな恥ずかしいことが書かれてありました。
それから少しずつ、貴方の口から言葉が溢れ始めたのは、ここだけの話にしといてください。
5/5/2025, 12:53:42 PM