――いつも、いつだって、消えてしまいたいの
泣きながらだったり、ぼんやりとしているときだったり、生活のほんの少しの隙間によぎること。
食事中でも入浴中でも関係ない。ただ歩いている間にもそれは私の思考に入りこんできて、子どもに言い聞かせるように優しく容赦なく突きつけてくる。
私が望んでいるかなど関係ない。それが正しくて、最善で、常識で、決まっていることだと言う。
全て私のためであり、私のためを思って用意されたことで、私はそれを喜んで受け取るべきなのだ。
それでも今、ここで生きているのは何故だろう。
顔をあげた。雨を降らしそうな暗い雲が薄水色の空を泳いでいる。重く感じる水の匂いが風にのって、私を通り越してその先へと流れていく。
なんとなく振り返った。今まで歩いてきた道がみえただけだ。閑散として経年劣化しているけど整備するほどではないガタついた道があるだけだ。
背を押してくれるのは風だけ、手を引くのは斜陽の一筋だけ。私の存在を許容するのはこの道だけだ。
遠くで雨の音がする。霞んでいてみえないけれどゆっくりと近づいてきているように思う。濡れるのは嫌だからまた歩き出す。そしてまた思考し、思考を奪われながら、ただ歩いたり止まったりを繰り返していく。
――何の意味があるのか分からないのにね
【題:空に向かって】
4/2/2025, 10:29:27 PM