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 ある日、僕はただの女友達だと思っていた友香に告白された。他に好きな子もいなかったので、僕は彼女の告白を受け入れることにした。
 もともと友達だったのもあって友香と過ごす時間は心地良かった。長く一緒にいればいるほど、僕の中で彼女との時間が愛おしいものに変わっていくのを実感した。あの日、あの子に出会うまでは。
 ある日、職場に新しく入ってきた女の子、花恋。彼女を一目見た途端、僕は雷に打たれたような衝撃を受けた。一目惚れだった。その衝撃は友香と過ごした日々を一気に覆すほどのものだった。花恋との距離はどんどん縮まっていき、両思いだと確信した僕は、罪悪感を抱きつつも友香を捨てて花恋と付き合いはじめた。
 けれど花恋は思っていたような子ではなかった。デートに行けば僕が奢るのは当たり前。子供っぽくてわがままで、家事も全然しない。最初のうちは可愛いからで何でも許せたけど、付き合ってるうちにだんだん疲れてきた。
 その点、友香はいい女だった。僕が奢ると言っても断るし、僕に甘えてくるようなこともなくて。当時は可愛げがないなんて思ったこともあったけど、あれは彼女の思いやりだったんだ。友香がデートの時に作ってくれたお弁当も美味しかった。
 そう思い始めたら友香との良い思い出ばかりがどんどん浮かんできて、逆に花恋の悪いところがますます目につくようになってきた。
 僕が本当に愛していたのは友香だったんだ。それに今更気づくなんて、僕はなんて馬鹿なんだ。
 僕は花恋に別れを告げ、友香に「よりを戻そう」と連絡した。だが、友香から返されたのは冷たい一言。
「ごめん、あたし今、他に好きな人いるから」
 僕のアプローチも虚しく、間もなくして友香には新しい恋人ができたようだった。友香の隣で歩く、僕より背が高くて顔が良い男。僕は笑いがこみ上げてきた。
 僕が見た目で花恋を選んで失敗したように、いずれ友香も見た目で選んだあいつに失望するに違いない。自らの過ちに気付き、最後には僕の所に帰ってくるんだ。
 その時が来るまで、僕はずっと君を待ってるよ。君がいつあの男と別れてもいいように、僕が君をずっと見守っててあげる。君が僕を忘れないように、僕は毎日君に愛を伝えよう……。

 こうして彼は元恋人にまとわり続け、数カ月後、通報され逮捕されるに至った。彼はこれにより仕事をクビになり、友人も彼から離れていったという。
 彼の人生を狂わせたのは何だったのか。
 恋か、愛か、それとも……。

6/5/2025, 9:26:34 AM