海街 鯨

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ティーカップの中の紅茶を口に運ぶ手が止まった。
フリーズというやつであるが、今まで実体験などしてこなかった。
「おひい様は……昨日、午後頃に…」
そんな私を察したか恐れたか、メイドは気まずそうに目を泳がせた。
「伝達ご苦労。行きなさい。」
ティーカップを置いた。陶器の食器特有の音がした。メイドは失礼しますとだけ言って、私に背を向ける。私をメイドの顔など確認せず、反対の窓の中の空を見た。

5/20/2024, 9:35:17 AM