「踊りませんか?」
よく晴れた公園の昼下がり。
ベンチに座っていると隣の彼女は思い付いたと言いたげに右手を胸に当てて、左手を差し出す。
「普通は夜に言わない」
中々踊る気にならないので、得意げに鼻を鳴らすその顔を見つめながら問う。
俗に言うムードが無いのだ。
「明るくなきゃ意味ないんだよ」
やれやれとわざとらしく答えられた。
雰囲気なんて求めたのが間違いかもしれない。
立ち上がる気も無くなったので座り直すと、ジャリと地面とローファーの擦れる音が聞こえた。
「なんで?」
ロマンチストも言われるだろうが、星空に照らされて踊るのが最適解だと考えている。
その為、昼間である事に価値を見出せなかった。
「そりゃもう、君の顔を見つめられるから」
なるほど、これはロマンチストだ。
そう思った私は手を取って立ち上がる。
10/4/2024, 12:30:55 PM