むかしむかし ある所に貧しい4人家族がおりました。
心の穏やかなお父さん、心優しいお母さん、しっかり者のお姉さん、少し気の弱い弟の4人で貧しいけれども仲睦まじい生活をしておりました。
ある日、家族4人で森の奥に売り物にする木の実を取りに出かけました。
その道中、獰猛な熊が現れて家族は命からがら逃げ出しましたが、その途中お姉さんと弟は両親からはぐれてしまいました。
お姉さんと弟は、はぐれた両親を探して森の奥を2人ぼっちでさ迷い歩きます。散々歩いて、とうとう日もくれて月が登ってきました。
2人の歩く道先を照らすのは、空に浮かぶお月様だけです。
森はとても深く、がむしゃらに走って逃げた2人は帰り道が分からなかったのです。
しばらく歩くと、どこからか嗅いだこともないような素敵な香りが漂ってきました。
お姉さんは既に半泣きになっている弟の手を引いて、香りの強くなる方へと歩いていき、そしてなんと全てがお菓子で出来た素晴らしい家に辿り着きました。
すっかりお腹がすいていた2人は夢中になって家の至る所を食べ尽くしました。しかし、この家は魔法のお菓子の家なので、ふたりが食べたそばから何事も無かったかのように元に戻ってしまうのです。
無限に食べれるお菓子の家。貧しい自分達には今まで食べたこともないようなとびきり甘くて素晴らしい家。2人はすっかりこの家に心を奪われてしまいました。
何とかしてお母さん達を見つけて、4人でこの家に暮らしたい。
空に浮かぶ大きな一番星にお願いし、その日は2人で同じマシュマロのベッドで眠りにつきました。
一方、子供達とはぐれた両親も子供達を探しながら頭を抱えて途方に暮れている所でした。
森にはクマなどの獰猛な動物もいるのです。きっと子供達も無事では済まないだろうと母親は涙し、父親はそんな母親を慰めていました。
虚しい心を埋めるように寄り添っていた2人でしたが、頭にコツンと何かが当たりました。
不思議に思って空を見ると、なんと包装紙に包まった飴玉が振ってきました。1つずつ、空からどこかへ導くかのように道の上に振ってくる飴玉を辿って歩くと、段々と甘い香りが鼻をくすぐります。
両親は、我が目を疑いました。
自分達も口にしたことがないような上質なお菓子だけで構成された家が目の前に現れたのですから無理もありません。
飴細工の窓から中を覗き見ると、探し求めた我が子がふあふあなマシュマロのベッドで寄り添いながら穏やかな寝息を立てているのが見えました。
そうです。夜空に光る大きな星が、子供達のお願いごとを聞き入れて叶えてくれたのです。
以来、貧しかった4人の家族は無限に食べれるお菓子の家のパーツを街で売り、それなりに良い暮らしをして幸せに仲睦まじく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
3/21/2023, 10:06:28 AM