『突然の別れ』
(男性同士の恋愛を匂わせていますので、苦手な方はお逃げくださいませ)
「おかしいなぁ、この辺や思てんけどなぁ」
「もうエエやん。みうちゃん、諦めぇや」
這いつくばるようにして探す俺に、漣はのんびりした声をかける。
俺は、榊原美優人(みうと)
そして、蓮のフルネームは古澤漣。
漣のおばあちゃんはスイス人とかで、漣も『染めてません』って文書を学校に提出するぐらいの天パな茶髪なので、女子達は陰では『ふわふわ王子』なんて呼んでいる。
ふわふわは髪の毛のこともあるけど、性格もふわふわでポヤ~としてる。
なので、小学校からの付き合いの俺は、ちょっとした保護者気分?
と言いながら、漣に近づくヤツを威嚇してるだけだけど。
で、さっきから何をしてるかっていうと、一時間程前、学校が終わって2人でチャリで遊びに行く途中、俺がトラックの左折に巻き込まれた。
とはいえ、いなか道だから、横はちょっと広めの用水路だし、トラックも軽トラに毛のはえた位の大したこと無い大きさだけど。
結局、バランスを崩して用水路に落ちただけで、怪我のひとつも無く、トラックの運チャンは何度も謝りながら行ってしまって無地終了と思ったら、漣から貰ったアイスのアタリ棒が無い!
漣は諦めろって言うけど、折角、漣がくれたのに!
使わずに俺の宝物にしようと思ってたのに!
なんて俺は諦めきれず。
「もうエエやん。また当てたらあげるし」
「ちゃうねん!漣に貰ったいうのが大事やねん。折角くれたのに」
「アタリや思てあげたけど、みうちゃんがトラックに当たりそうになるなんてなぁ。なんか、縁起悪いからもうエエて。ホンマ、みうちゃんが無事で良かったわ。なんかあったらと思うと」
確かに、無事やったから良かったと思ったほうが良いのかな。
俺もちょっとそう考え直した。
うん。
なんかあるより、漣と一緒が一番やもんなぁ。
5/20/2023, 9:59:53 AM