no name

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は、と長めに吐き出した息は白くなってイルミネーションに溶け込んだ。街ゆく人々は、家族連れだったり、会社員だったり……恋人同士だったりする。

よく、ネットで見かける可愛らしい結び方のマフラーに顔を埋もれさせている女性。彼女もまた、恋人を待っているのだろうか。女性をこんなふうに待たせたのは、いつが最後だったか。

もう、分からない程、記憶は白んでしまった。

仕事をこなし、適当に飯を済ませ、缶ビールを煽りながらソシャゲをして過ごす。そして、偶にテレビを眺める……といったような味気ない生活になってしまっていた。

そして、今日もそれは同じだろう。

大晦日だから、何かするという訳でもない。

「久しぶりにリモート飲み会しねぇ?」

だが、そんな考えも、旧友の連絡ひとつで変わってしまうものだった。兎の耳で丸を描いたスタンプを押すと、スマホをコートのポケットの中に突っ込む。

適当に入ったコンビニで、缶ビールとおツマミ……そして、普段は買わないであろう、ちょっとお高めのコンビニスイーツもカゴに入れた。

今日は、今年は彼に言うことが出来そうだ。

「よいお年を!」

12/31/2023, 10:47:55 AM