ペンギンの搾り汁

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私は今、抱かれている。

目を潤ませた女の子に、抱きしめられている。

なぜか。

思い出せない。

「ねぇ……私だけを見て」
その言葉は、全く無意味な物に感じられた。
だって、とうに私の視界は、その少女だけを捉えているのだから。

今更お願いされたって、何も変わらないのだから。

この子は、なんで泣いてるんだろう。

どうして、そんな目で見てくるんだろう。

理解出来ないし、して良いのかも分からない。

「うん」
肯定の言葉。
その短い一言だけしか、私には返せなかった。
極ありふれた単語。

そんな言葉なのに、彼女は口角を上げたんだ。

そして、私の体に回した手を、いっそうきつく抱きしめた。

1/21/2026, 12:44:06 PM