無音

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【10,お題:最初から決まってた】

きっと、これは最初から決まっていたことなんだ。それこそ俺が生まれるずっと前から

「俺は、1番にはなれない。」


俺は双子だった。俺は弟で兄がいた。
それこそ、顔も声も好きなものだって、そっくりそのまま俺の生き写しのような奴だった。

でも何故だか、やることなすこと全てにおいて兄貴は俺の上を行った。

俺がかけっこで1位を取った時、兄は市内のマラソン大会で1位を取った。
俺がゲームで最高記録を出した時、兄はそれを2分で越えて見せた。
俺が絵を描いたときも、工作で本棚を作ったときも
俺が努力をして積み上げたものを、容易く兄貴は踏みにじった。

そして周りの大人たちは、比べっこが好きらしい。
どんなことでも俺と兄貴を比べた。

......いや比べてない、一方的な贔屓だこれは
弟は兄の引き立て役にしかなりえない

どんなに努力をしても、兄貴という存在が邪魔をする

兄貴なんて、いなければよかったのに..

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「ーーーっ!?~~ッッーっ!」

「ーーー✕✕✕っ!~ッッっ!」

ドンッッッ!..............ドスっ

兄貴をベランダから突き落とした。

「はーっ...はーっ...はーっ...」

これで、俺は...

「ハハ......ッッハハハハハハハハハ!」

俺は狂ったように笑い続けた。

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それから数年後、俺はふざけて落下死した馬鹿な弟を持つ兄として生きている。
目の上のたんこぶが消え失せて、俺は自由に生きれると思った。だが

「兄だけでも生きててよかったわ、弟のほうは無能すぎて要らないもの」
「弟は死んでよかった」「兄だけいればよかった」

......そうか、最初から俺は要らない奴だったのか
全部最初から決まってたんだ、この結末も......

月に照らされた人影は、閑静な住宅の海に沈んで消えた。

8/7/2023, 11:33:09 AM