「Don't you feel anything?
Everyone is looking so sad♪」
俺は隣で鼻歌を歌っている男に横目を向けた。
冷たい柵を手で握って丘からの夜景を眺めているらしい。
煙草の箱を人差し指で突いて舌打ちをした。
「なぁ、あの明かり一個一個が誰かの人生なんだぜ」
「なに女みてぇなこと言ってんだ。そんなことよ」
「タバコなら持ってねぇよ」
「あっそう。ライターならあるのに?」
俺はソイツの尻ポケットに視線を向けた。
「オメェもそうだろうよ」
俺は白いため息を吐いた。
「確かにな、悪かったよ」
「なぁ、もし死んだ後の世界があったとして、そのアントはなんだと思う」
「またそのゲームかよ」
俺は腕を組んでから左程悩まず答えた。
「この世なんじゃねーの」
「でも、生まれる前の世界と死んだ後の世界が同時に存在してるなら、この世もあの世じゃないのか」
「間に挟まってるから?」
「違う、もっと大きい世界が存在してるってことだよ」
「この世はその世界の一部だと?」
「ああ」
「....イマイチぴんと来ねー」
「この世は全部同じなのかもしれない。俺もお前も」
「は?」
「女の長い髪が、纏められてるのをみて思ったんだよ。その束められてる髪自身の一本同士が同じ女の頭皮から生えてるって思うか?」
「しらねぇよ...。思わねぇんじゃねぇの」
俺は心底呆れながら話の流れに毛並みをそろえた。
「そうなんだよ、俺らも本当は全部一緒で全員が生まれ変わりなのかもしれねぇな」
「....全然ちげぇように見えるけど?」
「それは....」
「もういい、いいぞ俺は。」
「....帰ろうぜ、酔ってんだろお前」
「運転よろしく!」
ケロッと笑っていつものアイツに戻った気がした。
「車出させた挙句酒まで飲むなや..」
「お前も前同じことやったじゃん」
「じゃあこれでチャラな」
「はいはーい!」
俺は街の方を気付かれないように一瞥した。
視力が悪くて微妙に違ういろんな光が一つの光に感じた。
10/29/2025, 3:29:26 PM