蜂蜜林檎檸檬蜜柑

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【何気ないふり】

今日も学校から家に帰りリビングへと行けば、そこには可愛らしい色に染めた髪を巻き、厚化粧をするお母さんが居た。今日の夜も誰か男の人と遊びに行くのだろう。ゴミやものでぐちゃぐちゃな床を慣れた足つきで歩き、お母さんの方へと近付いた。
『あ、あのね、お母さん、今日私部活で』
『煩い。』
あぁ、今日もまたお母さんの一言で一蹴された。
お母さんはいつもそう。私の話を聞いてくれない。けど私はそれで良い。もう慣れたから。
私はいつまで経ってもこの状況に慣れてくれない感情に苛立ちを覚えながら、唇を噛み締めてまた言葉を発した
『そういえば明日…』
『耳ついてないの?煩い。』
まただ、お母さんはやっぱり私を相手にしてくれない。
私はお母さんに話し掛けるのを諦め、床に落ちているビールの缶と目を合わせながら、リビングの隣である自室へと向かおうとした。
するとお母さんが一呼吸置き、
『あんたさぁ、習い事、なんで行かないの?お母さん毎月お金払ってるんだけど、貧乏なんだけど、あーあ、どっかの誰かさんのせいでお母さんが可愛くなる為の費用が削れていくなぁー、あーあ!』
また言ってる。私の話す事を何一つ聞かず、自分に非が回る事については沢山物を言う。確かに、習い事に行かない私も悪い。けど、こんな仕打ち、酷いだろう。目頭が熱くなり、唇が震えた、けど私は泣きそうになるのを必死に抑え、笑顔でいた。何気ないふりをした。
そして時々思う。私は酷い子供だ、と。
母子家庭で私を育ててくれたお母さんの心を支えて上げれず、満足な結果を出せず、いつしか愛して愛される関係である筈のお母さんを恐怖の対象として見ていた。

私はこれで良いのだろうか。このまま愛されず、愛してあげられない関係で良いのか。お母さんは私のことを気にかけてくれないのだろうか。

ねぇお母さん、一度でいいから、私を愛して。

     
      〜 愛着障害 〜

3/30/2023, 1:16:00 PM