#3 眠れないほど
自分のお腹の音がうるさくて眠れない。いや、眠れていないのは、お腹が空く前から、なんすけどね。とりあえずなんか食べようとキッチンに向かって冷蔵庫を漁る。ふと気がついた、不自然な量の葡萄ゼリー。
「なはは…僕ぁなにしてるんすかねぇ」
誰に向けたものでもない愚痴をこぼして、作りすぎたゼリーを頬張る。あの子の胃のサイズに合わせて作ったそれでは、全く腹は満たされない。
___あの子が、いつものいい匂いじゃなくなった瞬間を忘れられない。きっと、自分の発言が原因なんだろうけど考えても考えてもお腹が空くだけで。
どれだけ食べ続けていただろう、時間を確認するのにスマホの電源をつけて目に入った『1件の新着メッセージがあります』の文字。通知は切っていたから気が付かなかったが、ちょうど日付を跨いだ頃に来ていたようだ。
差出人は、『礼瀬マヨイ』
「今日は突然逃げ出してしまいすみませんでした。椎名さんが、他の方とお食事されたという話を聞いて、なんだか、いたたまれなくなってしまって。私が嫉妬なんて、烏滸がましいですよね___」
嫉妬?マヨちゃんが?
そのあともマヨちゃんがいっぱい謝っていたような気がするけど、そんなことはどうでもよかった。
また、先程とはかけ離れた軽い足取りでキッチンに向かう。
取り出したのは、まだまだ常備してあった葡萄ジュースとゼラチン。
今日はまだまだ眠れそうにない。
12/5/2023, 1:50:22 PM