『日の出』
修学旅行の旅のしおりに朝5時起床の一文があった。晩ごはんのときの集まりで先生たちから明日は5時起きだからまくら投げや恋バナなどせず早く寝るようにと念押しがあったので誤記ではなく本当に5時起床のようだ。アラームいっぱいかけようねと相談し合う女子たち。静かにどよめいていた男子たちも女子たちに倣い、起きてなかったら起こしてくれなどの相談が始まった。僕も隣りにいたやつに同じことを頼む。
まくら投げと先生の見回りの応酬が何度が続いた夜が明けて海沿いの旅館に朝がやってきた。これまでの人生で一番早い寝起きぶりに頭がぼうとする。前を歩く同級生のあとをなんとかついていくと、水平線まで見渡せる穏やかな海が見えてきた。近くにはしめ縄が巻かれた岩が見える。同学年全員がみな一様に眠たそうな目をしていたが、一条の光が差すと一斉に感嘆の声が漏れた。太陽が驚くほど眩しい。日に当たるだけで体があたたかくなる。ぼうとしていた頭から徐々に眠気が無くなっていく。これまで当たり前にあるものと思っていた太陽のありがたみが身に沁みていく。太陽やばい、太陽すごいというざわめきの中で僕は言葉を失ってただただ立ち尽くしていた。
1/4/2024, 1:44:50 AM