小説
おばみつ※転生if
「きゃあっ!!」
突然の事に、私は悲鳴をあげてしまった。
「甘露寺!?」
リビングから伊黒さんが走ってくる。相当焦っていたようで、スリッパが片方脱げてしまっている。
そこで彼が見た光景とは。
座り込む私。そして床に散らばる皿の破片とまだ温かい料理。
「……ごめんなさい」
私は涙を浮かべ、落としてしまった料理をただ呆然と眺めることしか出来なかった。
「泣かないでくれ、大丈夫だよ甘露寺」
彼は私の頭を一撫ですると、無惨に散らばった料理だった残骸を片付け始める。慌てて私も片付けに加わろうと優しく制されてしまった。
「ごめんなさい、私のせいなのに」
「いいんだ、それより怪我は?君の体の方が心配だ」
こんな時まで私なんかの事を気にしなくてもいいのに。だって私は普通の人より強いんだから。
「こら、そんな事言わない」
いつの間にか床は綺麗さっぱり片付いていた。手を洗いながら彼は私に言葉を返す。
気づかないうちに心の声が漏れてたみたい。
「君は俺にとって、か弱い普通の女の子だよ」
ストレートに言われ、私の頬は熱を持つ。伊黒さんは、私の欲しい言葉をすぐにくれるから、いつもドキドキが止まらないの。
「…うん、ありがとう。伊黒さん」
「そんな君に提案があるんだ。極秘ミッションだよ」
「極秘ミッション…!」
素敵な響きの言葉に私の心は先程と打って変わって舞い上がる。ここで失態を挽回しなければ!
「伊黒さん!私どうすればいいの?」
「これ、一緒に買いに行こう」
彼がスマホを差し出してくる。
「……!これは…!!」
買い物から帰り、机の上にはポテトとハンバーガー。
極秘ミッション、それは某ハンバーガーショップで期間限定のセットを買うことだった。
「それじゃあ…いただきます!」
「いただきます」
二人でまだ温かいハンバーガーにかぶりつく。するとチーズとハンバーグの絶妙な旨みが口いっぱいに広がった。次いでポテトを放り込むとしょっぱすぎない塩加減がお芋の味わいを引き立てていた。
「美味しい!とっても美味しいわ伊黒さん!」
「あぁ、美味しいな」
手作りの料理も良いけれど、たまにはジャンクフードも良いわね。
「…確かに極秘ミッションね…。普通ミッションだったら美味しすぎて毎日食べちゃうわ…!」
「ははは、そう、だから極秘だ」
私の変な解釈に、彼は笑って付き合ってくれる。小さなことだけれど、それがとても嬉しかった。机の上のポテトが残り数本になった頃、私は新たなミッションを提案する。
「ねぇ伊黒さん、明日は新しいお皿を買いに行こう?」
「いいよ、楽しみだ」
11/21/2024, 11:42:05 AM