足駄

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秘密を作った。
出来心だった。
なんてこともない話。先週末に遊んでいたのは中学生時代の同級生だってこと、それだけ。
あなたは知らない人で、テニスが上手くって、と質問に答えようとして、ものぐさと見栄っ張りが顔を出した。
だから、秘密を作った。
「まぁ、ちょっとね」と笑って誤魔化してみた。
そうすれば、目に見えないところを増やせば、私はもっと魅力的になれるかな、なんて。
そう、ちらりと反応を窺えば、向かいのあなたは「へぇ、……」と口をきゅっと結んで、にこりと笑う。生まれた空白を補うように。
あ、と頭蓋にすきま風が通り過ぎたのを見ないふりして、目を逸らしてストローを噛んだ。ふやけた紙の味が飲み物の良さを全部殺して、あなたはどんどん大きくなるのに私はどんどん小さくなる。見て見ぬふりしてなんにもなかったように笑う、優しくて残酷なあなたの前で、私が浮き彫りになる。
わざわざ作る必要なんて無かった。
こんなに薄っぺらい自分を1人で持て余していること、それ自体が私の、


お題:誰にも言えない秘密

6/5/2024, 7:09:07 PM