光岡たま

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夏の匂い

 「夏の匂い」と聞いて、ふと思い出したのは、カブトムシの匂いだった。実家の近くに、カブトムシなどがたくさん集まる林があって、そこは、通学路にもなっていたから、学校への行き帰りによく近所の子どもたちとカブトムシを探して歩いた。

 夏休みに入ったばかりの時、早朝にみんなで集まって、カブトムシを獲りに行こうという話になり、早起きして約束の時間に僕は出掛けて行った。

 しかし、待てど暮らせど誰も来ない。日時を間違えていたかと思い、その日は帰った。

 後から聞いた話だが、みんな朝早く起きることが出来ず、寝坊して来れなかったらしい。実のところ僕は、前日の夜、興奮して眠れなかったのだ。何がそんなに楽しみだったのか、今となっては自分でもわからないが、それが僕とっての「夏の匂い」だ。

7/1/2025, 6:14:31 PM