思いつきなんちゃって小話

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【夜景】

年に一度、陸の素敵な夜景を見に行く。

いつも光のない海の暮らし、綺麗な光と言えば、
チョウチンアンコウが餌をおびき寄せるぼんぼりだけ。

そんな暮らしを、嫌っている訳では無い。
色んな種類の魚や、同族と楽しく暮らしているし、
何不自由ない生活である。

みんなは『人魚姫』のお話知っているだろうか。
あれは海でも人気な物語で、子供に読み聞かせたりもする。
可哀想な人魚、陸に行くことの恐ろしさ、人間は信じるなという教訓の物語として。


『え?光がないのになんで読めるの?
それは、君たちと違う言語を使っているからだよ。』

そう言うと、足を持つ君は感心したようにノートへ書き留める。

『何を書いているの?』
そう言い覗き込むと、落書きのような筆跡が見えた。

ああ、住む世界が違うとこんなにも違うものなのか。
そりゃあ、人魚のお姫様が文字で会話できなかった訳だ。

「なんて書いてあるかわかるの?」

『いいや、わかんないや笑』

「だよね。 けど、話し言葉が一緒なのは驚いたよ。」

『そうだね〜。なんで言葉が通じるか知ってる?』

「この国の海だから…?かな。」

『いいや、違うよ。
じゃあ、来年また聞くから。考えておいてね』

「ええ…わかった。」

そう言い、2人は海のほとりから、陸の眩い光を眺めた。
君にとってはいつもの景色だ。しかし、我々が出会う今日この日には、毎年花火が上がっている。そのため、君も食い入るように見入っている。

その横顔を見て、初めて君と出会った日を思い出す。
もう、10年はたっただろうか。
君の背はずっと高くなって、大人っぽくなった。
正直、夜景を見に来る目的で君と会うのが楽しみになっている自分がいる。





一体いつまで、君はここへ来てくれるのだろうか。





あ、そうそう、君たちにだけは答え合わせ。
我々人魚が人間の言葉を話せるのは、
人を惑わし海へ誘うため。

人魚のお姫様は、その声を無くしたから王子を手に入れられなかったんじゃないかな?なーんて。

ん?そこにいる人間を海へ連れていく気なのかって?
冗談はよしてよ。“今は”連れていく気はないよ。
大切な大切な友人だからね。

9/18/2023, 1:18:17 PM