稲荷山房

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文字に色はないが、物語は極彩色であるように
わたしの生活は無色に見えても
そうでない

わたしは
わたしを取り巻く白黒の世界の代わりに
手に入れたのだ

晩秋の風を美しいと言える心を
渓谷の流れを感じ取る触角を
岩清水の美味さを知る舌を
小説の頁を繰る楽しさを
手先の細やかさを
微睡みを

例えるなら
カンバスを鮮やかにする絵筆を

あなたの幸せを願えなくても
わたしを満たすことが出来る
わたしはひとりであろうとも
あなたに寄りかかりはしない

わたしは旅人
行きずりのあなたに
わたしの筆を
折られるものですか

9/30/2025, 1:52:35 PM