たこわさ

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あの子が結婚したらしい

社会人になって4度目の秋、今でも月に1度は顔を合わせる私の親友、の友達、の更にその友達と結婚したそうだ

高校を卒業して以来、あの子が何をしているかなんて今の今まで何も知らなかったのに、「風の噂」とはよく言ったもので、福音は突然、どこからともなくやってくる

正直どんな顔だったかはよく覚えていない
凛と結われた翠の黒髪が時折揺れるのを、後ろから見ていただけだったから

現実と幻想が絡み合い、綾なされ、すっかりねじ曲がった記憶の中で、あの子の虚像は新月の夜に生きている

歩く、微笑む、残酷なまでに冷たく輝く
眩んで白んだ視界に焼き付いて離れない
静寂に包まれた新月の夜、人の形を成して私をからかいに来る月
きっとそれがあの子なのだ
そう思っていた

ダイヤモンドが光る薬指
純白のウエディングドレス
鳴り響く鐘の音
彼女は誰?


──── 黎明 ────


満月の夜、長い眠りから覚めた気がした



#風が運ぶもの

3/6/2025, 8:03:26 PM