「じゃあね、さよなら」
その言葉と俺を置き去りに君は俺の側を離れた。
なんで、そんな事も言わせてはくれない君を恨むことも出来ない俺は、心底君に惚れていたのかもしれない。
『じゃあね、さよなら』
このたった8文字の言葉が俺の頭を埋めつくす。
どうして…どうしてなのだろうか。
俺じゃ彼女を幸せに出来ない、そう考えたのか。
「…本当の気持ちは本人しかわからない…か」
いつの間にか零れた独り言も、誰もいない静寂に吸い込まれていくようだ。
ふと視線を上げると、テーブルに置かれた鍵が目に入った。
「もう、戻れないんだな」
本当にそう思った。そんな時にやっと、頭で理解することが出来たことに気づいた俺は、自分が思っているよりも、ずっと、彼女を愛していたのかもしれない。
所詮は大学生の恋愛だ。何かの拍子に簡単に終わりを告げてしまうようなものだ、とは分かっていても、あまりにも突然すぎる別れだった。
まあ、別れた理由はわかっているのだけれど。
「…っ、」
街で声をかけようとして、やめた。
理由は簡単。彼女が他の男と歩いていたからだ。
それも、俺の前では見せないような笑みを浮かべていた。
それでも、好きだった俺はかなりの者だと思う。
突然の別れの後には、突然の出会いがあると信じている。
Write By 凪瀬
5/19/2024, 10:58:11 AM