「時計の針が重なる」と聞くと、子どもの頃に読んだ絵本の影響だろうか、大人が10人がかりで運ぶような大きな大きな時計が自然と思い浮かぶ。
スペードのようなかたちの金色の針に、同じく金色のローマ数字。指している時間は勿論、夜の12時。
そういえば、昔、似たような時計が祖父母の家にあった。
大人が一人で抱えられる程度の大きさではあったが、ネジを回すと、くるくると金色の男女3組がお互いに向き合って回り出すという点で、絵本の中の時計よりも輝いて見えた。
応接間にあったその時計は、壊れたらいけないからと言って、幼かった私にはほとんど触らせてくれなかったのを覚えている。
あの時計も今はどこかで塵と化しているのかと思うと、なんとなく、寂しくなる。
「時計の針が重なって」
9/24/2025, 1:35:18 PM