ゆかぽんたす

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見えてきた。
田舎道、菜の花畑、大きな桜の木。黄色と緑とピンク色が綺麗に融合し合っている景色。あぁ春だなあと思うと同時に、あぁ懐かしいなあとも感じてる。
いつだったか、あの桜の木に登ってみようかって話になったよね。どの子が言ったのかは覚えてないけど、そんなやんちゃなこと言ったんだから男子だったのは確かかな。でもそれを聞いたキミが顔を真っ赤にして怒ったんだ。桜も生きてるんだからいじめないでって。あの時みんな馬鹿にしてたように笑ってたけどさ、僕はキミのこと、優しい心の持ち主なんだなって思ったよ。何より君の意見に賛成だったしね。登った拍子にあんな綺麗に咲いてた桜が散ったら可哀想だもんね。だから、あの時のキミの発言は正しいと思った。
この列車からの景色を見てると、不思議とキミを思い出してしまう。毎年必ず春はやって来るのに、キミはもうこの街には帰ってこないのかな。僕ら互いに、自分の道は自分で選ぶほどに成長したわけだから、キミがどこで何をしていようとそれを誰かが止める権利は一切ないのだけど。
いつか春風のように、ふんわりと舞う蝶のように、キミが僕と同じように列車に乗ってここへ帰ってきてくれないかなって少し期待してるんだよ。そうしたらまたあの桜の木を一緒に見たい。
そんな日がいつか訪れたらいいな。
春を愛する人を思い浮かべながら、僕の体は列車に運ばれてゆく。青い春に向かって。

2/29/2024, 11:37:40 PM