お茶の時間

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静まり返った中、ミヤは忍び足で厨房へと忍び込んだ。
目的はただ一つ。
甘いものを食べるためだ。
いや、分かっている。
こんな夜更けに食べるなんてよくないってことは。
初めはなんとなく目が覚めて、再び眠ろうとしたのに眠れなくて。
しまいにはお腹の虫が鳴ってしまったことで、ミヤは思わず長い溜息を吐いた。

そういえば昨晩は緊張のあまり、食事が喉を通らなかったよなと思い出して、また小さくため息をつく。
さらには思い出したくないことも思い出して、1人頬を赤く染めたり青ざめたりと余計なエネルギーを消費したところで、またお腹が空腹を訴えてきた。

……とりあえずなんか食べよう、と。

昨晩のデザートでも残っていないかなと厨房を物色していると、冷蔵庫にあったのはプリン。
うわ、ラッキー!と呟きながら手に取るとスプーンを拝借し、一口掬い上げる。
ここまで来て葛藤がミヤの中に渦巻いた。

あぁ、なんてスリルなの……

夜更けに食べる背徳感を感じながらも、本能には逆らえず思わず頬を緩ませながらゆっくりと口に含む。
甘い卵とほんのりと焦げたカラメルの苦味が口の中いっぱいに広がって、幸せが一気に身体を駆け巡る。

……何してるの、ミヤ?

今まで1人だった筈、なのに。ミヤの背後から耳元で囁く、低音の囁く声音が聞こえると、その場で固まってしまった。
ゆっくりと身体を抱きしめられると、首元に擦り寄ってきて、微かにくすぐったい。
よりによって、この人に見つかるとは。

えっとー、寝れなくて、お腹が空きましたので、何かないかなーって、あ、あははは……

だからといって、こんな格好で?
こんなに冷えてる。

大丈夫!食べたらすぐ戻りますからぁっ!?
というかなぜ貴方様がこちらにぃっ?

身体を抱えられ、拉致された。
ああ、なんか色々な意味で終わった気がする。

君の気配がしたから。

いや、とりあえずプリン、食べさせて欲しいんですけど。




11/12/2023, 12:10:32 PM