NoName

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高鳴る胸の鼓動
永遠の孤独
覚めない夢
明けない夜はないよ

一昔前のアイドルソングを聞いていた。
推しの子が、センターだった。
握手会にもいった。
観客席で見るよりずっと美人で、それでいて愛を振りまく彼女のことをずっと天使だと思っていた。
帰ってから、握手会の事を思いなおすと、もう二度と手も洗えないなと、思った。
そんな、推しのアイドルグループが解散して二年が経った。
推しだったあの子は俳優と結婚したらしい。
今じゃ一児の母だ。
とある界隈では酷い声が上がったけど、もちろんお祝いの声もなくはなかった。
むしろ僕は、これからも元気で歳をとっていく彼女に声援をむけていた。
しかし、人というのは、分からない。
彼女が笑っている、テレビの向こう側では、弱肉強食の世界が広がっているのだ。
それを、引退という形で、この世界からいなくなった彼女に、僕はこの世界の喜劇性を感じずにはいられない。
かなぐり捨てて叫べば、彼女の声をもっと聞きたかったと言っても良いのだが、彼女は僕たちを魔法にかけて去っていった。
そのことに対しては、誰も文句はなかろう。

9/8/2023, 10:18:36 AM