北極星は、南の形を夢見た

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#98「見知らぬ街」

ここにはいられなかった
神々の奇跡をAIだと刷り込まれた世界は
カプセルの中で死を待つのみだ

だれも自分を信じられないんだな、と思う

もし最後の審判がきたとしても
人類は笑いながらカメラを向けるのだろうか
「こんなの、現実じゃない」って

ふと、墓場はここで良いのだろうかと
警鐘がボクの頭を揺り起こした

未知との邂逅への高揚に
足は自然とスニーカーを履いていた
死よりも想像のつかぬ未知の星
天国の経由地にはちょうど良いだろう

ボクは、船に乗った
もう助からない遠くで嘲笑う人々を
弔うように見送って

そうして案外、ボクの視野も狭いのだなと知る

死地に向かうカメラマンの気分だったが
旅人は思ってもいない歓迎を受けた

故郷の地球とは似たようなものばかりでも
未知は好奇心のスパイスとなる
目に映る全てが、艶やかに光って
手に触れれば暖かかった

この星で感じた唯一のかなしみは
幸せという感情だけが、地球がまだ明るかった頃と
なんら変わらないという事実だ

けれど、帰りたいとは思わなかった
それは見つけてしまったから

ボクの内に奇跡があることを
それは、もっと先へと羅針を動かした

知ることを怖れなかったボクは
宇宙人の一員となった

未知は、この世で最強の魔法で
まるで禁断の果実のよう
恐れるのも仕方がないよな

でも、その先が楽園だったことを誰が知ろうか

足跡を残した未知の星
ボクはそこで、自らの奇跡を再出発させたのだ

8/24/2025, 1:01:16 PM