もう何年経つだろうか。
お別れの言葉など無く、最後に話した内容も覚えていない。突然いなくなってしまったから。
金木犀の香りをかぐと、あなたを思い出します。
笑った顔も少し困った顔も。
あれだけたくさん過ごしたのに、記憶の中のあなたはもう、少しずつこぼれ落ちています。
覚えていた記憶はどんどん剥がれて、小さくなっていってるみたいです。
あなたの仕草や、癖も、よく聞いていたその声も、僕はうまく思い出せない。
もう僕の中にあなたはいないのかもしれない。
また会いたい。また笑顔がみたい。
また、その声が聞きたい。
その時、あなたの声がしたような気がした。
かすかに聞こえたその声は風の音だったのかもしれない。
僕は目を閉じた。
サラサラと木の葉が揺れる。鳥の声もする。遠くで車の音もする。風の音も。
あなたはまた僕の中で少し困った顔をした。
またあなたは小さくなった。
5/4/2024, 2:11:15 PM