小音葉

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まだ君は泣いているんだね
張り裂けそうな悲嘆を抱えて独り、空に立っている
乾いた素振りで暴れてみても
その瞳は晴れた日差しを忘れて雲に隠れて
涙を湛えて耐えてきたのだろう
幾度も日が昇り、月が巡る、永い時の中に閉じ籠り
もはや価値を無くした冠一つ抱き締めて
迸る光だけが君に残された雫だった

君は愛されずに生まれて、多くを愛した
多くを望み、それ以上を与えた
惜しみなく、つつがなく、君は空に立っていた
いつか君を穿つものがあるならば
それは鬼でも蛇でもなく、頬を伝う雨なのだろう
神が運命を定めるならば
君は何処へ向かうのだろう
旅立ちの時、僅かでも笑えていたら良いのだけど
美しい心の行き着く先は、きっと

聞いているか、聞こえているか
例え忘れてしまっても、結んだ縁が断たれても
君のことを迎えにいくよ
いつか世界が砕ける瞬間に、今度こそ共に在ると誓おう
手を繋いで共に終わり、次があるなら並んで歩こう
君が唄う神鳴りを標に、迎えにいくよ
傲慢だと笑っておくれ
それでまた君が寄り添ってくれたら良い
泣き止んで虹も霞む笑顔を見せてくれるのなら
それに勝る幸福などないのだから

(遠雷)

8/23/2025, 12:33:54 PM