にゃほ子

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「この想いは」

この想いは、どこにも書けない、どこにも残せない

私の中に留めておかねばならない。

幼い頃から家の仕事柄、父から「感情を表に出す
な」「人に弱みを握られるな」と厳しく言われ育った。

だから、これは誰にも知られてはいけない。

知られてしまえば…私を引きずり降ろしたい輩に、ここぞとばかりに攻撃されるだろう。

私の仕事は、

散歩1つするにも、見張りが常につく。

そんな、厄介な立場の仕事だ。

今朝も日課の朝の散歩へ出向く。

この時間が1番危険だ。ヤツらがあちこちにいる。

油断は出来ない。味方にさえ知られてはいけない。

…そんな事を無表情に考え、歩いていると、足元に何か柔らかいものが当たる。

私は。すぐさま気付く。

しまった!ヤツに捕まった!

…そう、私の足元には…散歩中の犬がいるのだ。

「すみませ〜ん!…えっ!?あなたはっ!」

飼い主が驚き口にしそうになるのをSPが止める。

そう…私はこの国を守るもの。

だから、犬や動物が大好き等と知られてはならないし、どこにも書いては残せない。

「いえ。それでは。」

私は、颯爽と歩き出さす。

今朝も誰にもバレてない、大丈夫。

安心しながら、家路につく。



私の主は、国を守るもの。

そして、私はその主を守るもの。

朝の散歩を日課にする主。

幼い頃からの教育で、感情を出さず弱味も出さない完璧な主。

……………………ではない。

気づいていないんだ…めちゃくちゃ表情豊かだって!

犬に懐かれてるのは、そういう優しさが出てるんですよ!主!

みんなに「動物好き」と周知されたまま、今日も我が主は完璧と誇らしげに歩いていく。

「あの方、犬好きなのよー!」

「人柄が良いのねー!応援しちゃうわ」

今日も主は、株を上げ続け……この国は安泰だ。

そう。

私さえ、黙っていたら良いのだ。

だから、どこにも書けないし、残せない。

2/7/2023, 6:56:00 PM