うみ

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 ──ふたりの行き先は。


「からだが命を失っても、手を繋ぐことはできるんですね」
「実体がないのに、不思議なものだ」
「それでもあなたの手はあたたかいです」
「君の手も」


「結局、ふたりで地獄へ行く約束はなくなってしまいました」
「それでもこうして君と会えたのだから関係ない」
「あなた、自分は地獄に行くだろうとあんなに自信を持って言ってらしたのに」
「君こそ、僕は幸せになってほしいと言ったはずだが?」
「しあわせでしたよ。あなたの望みを叶えることだけが、私のしあわせでした」
「あんなに泣いていたのに?」
「覗いていたんですね」
「見せられただけだ」


「僕の望みを継ぐことが、本当に君の幸せだったのか」
「しあわせでしたとも。あなたのいない世界では、あれが私のいちばんのしあわせでした」
「僕がいる今は?」
「私の幸せは、どうもあなたの形になってしまったようで」
「熱烈なプロポーズだな」
「先の世でも隣にいてくださいますの?」
「言ったはずだ、どうにも君を手放せそうにないと」


「あたたかいですね」
「ああ」
「もう寒くありませんね」
「君のいない時間は随分と退屈だった」
「私もです」
「次の世も君を見つけると誓おう」
「私にも誓わせてくださいませ」
「約束だ」
「ええ、約束です」




 ──そして、ふたりはふたたび手を繋ぐ。







*昨日の続きです

12/9/2024, 1:01:03 PM