もう35年以上前の話だ。
徳之島出身の同僚が、盆休みに実家へ遊びに来いよと誘ってくれたので、話に乗ってみた。
徳之島とは奄美大島と沖縄の中間に位置する南の島で、今はどうか知らないが、当時はぜんぜん観光地化されていない、サトウキビ畑ばかりザワワする、鄙びた島だった。
お盆だから8月なのに、大きな鯉のぼりがはためいていた。「なぜあんなモノがまだ泳いでいるのか?」と同僚に訊ねると、
「ああ、島の人間はそんな事いちいち気にしないから、しまわないでそのままなだけなんだよ。」と、関心無さそうに答えた。
私は人見知りする性質なので、ホテルに泊まって、島の案内だけ頼もうと思っていたのだが、
ホテルに泊まられては、俺の顔が立たんと同僚が憤慨するので、結局は1週間くらい、彼の家で飲み食いも全部お世話になってしまった(昼食以外は)。
人見知りする筈だったが、同僚のご両親も、島の人達もみな素朴で良い人ばかりで(具志堅用高さんを思い浮かべてみて下さい)、さすがの私もすぐにうちとけてしまった。
環境も素晴らしかった。ほとんど街灯もない家並みに、時々どこかから闘牛の嘶く声が聞こえた。
おばさん(同僚の母親)は、機(はた)織りが出来る人で、機織り部屋があり、細かく美しい糸を織っていた。
鶏肉の入った味噌汁、パパイヤの野菜炒め、普段から食べている物も何だか微妙に違うのである。
盆踊りに、小学校の校庭へ出かける時、おばさんが声を掛けてくれた、
「ハブに気を付けなさいよ。」
私は思わず笑ってしまった、
明かりもろくにない夜道、懐中電灯と提灯の頼りない光しかなく、物陰に隠れているハブに対して、自分はどうやって気をつけたら良いのか、まったく分からなかったからだ。
しかし見上げれば、
夜空には満天の星、降るような星空だ。ハブを警戒しながらも、思わず見とれてしまいそうだ。
星空の下、校庭に集まり、島の人々と共に、今夜は飲み、踊りまくるのである、
♬*°ワイド、ワイド、ワイドー、
吾きゃ牛ワイド、全島一ワイド!!
ウーレ、ウレ、ウレ、
吾きゃ牛ワイド、全島一ワイド、
ワイド、ワイド、ワイドー!!♬*°
(俺の牛は全島一強いぜ! の意)
4/6/2024, 2:19:42 AM