「あなたのこと、もっと知りたいです!」
「放っといてくれ」
「やです」
路地裏の暗がりで、ボロボロのエアコンの室外機に座る陰気な俺に全く物怖じせず、ゆるふわガールはニコニコしながらこちらに近づいてくる。
長年ここにいて、俺に声をかけてきたやつは何人かいたが、こんな場違いなやつがきたのは初めてだ。
「知ってどうする」
「面白そうだから!」
満面の笑み。
「あなたのこと、なんでも良いから知りたいんです。好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なこと。お父さんお母さんはどんな人だったのか。休みの日はどう過ごしていたのか。あと」
どうして自分から死んでおいて、こんな場所に縛られているのか。
「てめえ……っ!」
追い払うつもりで、塀に立てかけられていた鉄パイプを蹴飛ばす。
しかし彼女は笑みを崩さず、鉄パイプを片手でいとも簡単に受け止める。
「あはは、なんだか生きてる人間みたいですね」
彼女はその華奢な腕で、鉄パイプを勢いよくこちらに倒してきた。それは俺の体をすり抜け、塀や道にぶつかって甲高い音を立てて転がった。
「久々に、やりがいある人みたいで楽しそう」
ぺろりと出したその舌に、髑髏のピアスが光っていた。
【お題:もっと知りたい】
3/12/2026, 2:32:38 PM