君の声がする
時間はかかったが、これで全てが解決する。
別行動していた東吾と連絡がつかなくなって1週間。おそらく東吾のいたグループは全滅だろう。
私たちだけでもこれをあのお方に届けなければ...。
焦る気持ちがあったのもあり、背後に敵が近づいていたことに気づくのが遅れた。ばっと振り向くと後ろには奴がいる。
奇妙な仮面をし、真っ黒な服装で闇に溶け込んでいる。ついに気づかれてしまったか。逃げようとしたとき、不意に風が吹き、奴の仮面がとれかけた。ふと隙間から見えたあの顔に、私は見覚えがあった。嘘だ、とか有り得ないと脳内で繰り返す。だが、確かめずにはいられなかった。
「───⋯ねぇ、大和じゃない...よね?」
答えるわけない。答えてほしくない。
しかし、私の思惑に反して奴は、言った。
「そうだよ」
私が聞き間違うはずがない。
奴の声は、連絡がつかなくなった東吾と一緒に行動していたはずの君の声だった。
信じたくなかったが、そういうことなのだろう。
奴らは洗脳し、自らの手駒を増やす。大和は、すでに洗脳済みだったのだ。
あの方の言う通りだった。
「……あんただったわけね。東吾たちはどうしたの」
「すぐにわかるよ」
急に強い痛みが走る。大和が投げたナイフが刺さったのだ。
同じ声なのに、大和の声じゃないようだった。
そうか、もう君は……。
意識が飛びそうになった時、聞こえた気がした。
たすけて、と君の声が────
洗脳を戻す方法はまだない。しかし、あの方ならそれを解決できるかもしれないのだ。私たちの集めたあれを使って。涙がこぼれそうになる。ぐっと意識が遠くなるのをこらえ、かつての仲間を見る。
仲間を殺したならこいつは処分しなければならない。
それが、本人の意思に反したことであったとしても。
あと少し早ければ……悔しく思うが時は戻せない。
仲間にこれは使いたくなかったが、これ以上好き勝手させる訳にはいかない。
「大丈夫。一緒にいこう」
巨大な爆発を生むこれは私も生きてはいられないだろう。ありがとうと、今度こそ本当の君の声が聞こえた気がした。あとは皆に託そう───
2/16/2025, 6:28:19 AM