「羅針盤」
保育園の頃はお父さんとお母さんが手を繋いで一緒に歩いてくれた。
私が道を逸れないようにレールを敷いてくれていたけど、興味のあることにはたくさん挑戦させてくれた。
小学生になって毎日同じマンションの人たちと一緒に学校へ行くようになって、その日に学校で勉強したことを家族に話した。
はじめてのおつかいがしたいと言って、意気揚々と弟と一緒に近くのスーパーまでカレーの材料を買いに行った時、後ろにこっそりとお父さんがついてきていたことをよく覚えている。
その頃からだんだんと保育園や学校以外の場所に一人で行けるようになって、自分の家の周りの地図を頭で描けるようになった。
他にもできなかったことができるようになったり、やりたいことを見つけたり。
少しずつ自分で自由に決められるようになった。
中学からはもっと自由で、自分でお弁当を作るようになって好きなものをたくさん詰めたり、お年玉で好きな本を買えるようになった。
中高一貫で電車通学だったからいろんな最寄り駅の友達ができて、中学の最寄り駅周辺や友達の家の周りの地図が頭にまた追加された。
高校は選択が多い。
理系か、文系か。
将来何がしたいのか。
大学の学部・学科はどこにするのか。
どこの大学に行って何を学びたいか。
自分に適性はあるのか。
幼い頃に描いていた将来の夢が現実味を帯びてきて、自由を苦しく感じるようになった。
自分で決めたことだから責任を持たなきゃ、と一つ一つの選択に重みを感じて逃げてしまいたくなる。
今まではたくさんの人が「こっちだよ」って教えてくれたり、同じ環境を進む同級生たち一緒と過ごしたりしていたけど、ここから先は私だけ。
たくさんの羅針盤に支えられてきたんだな、と気づいた。
ちょっとずつ自由を与えて自分だけの羅針盤を持てるように導いてくれていたんだね。
これが大人になるってことなのかな?
方向音痴だから迷子になって遠回りをするかもしれないし、臆病者だから怖くてなかなか一歩を踏み出せないかもしれないけど。
これからは自分だけの羅針盤を片手に自分だけの道を歩んでいく。
羅針盤が示している限り諦めないよ。
歩みが皆より遅くても毎日マイペースに前進しているし、どんなに遠くてもこの先に素敵な未来が待っているから。
1/21/2025, 12:46:34 PM