たーくん。

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透き通っていて、思わず見入ってしまうほど美しいクリスタル。
このクリスタルがあれば、色んな願いが叶い、病気をせず健康になり、金運や恋愛運など全ての運が上がるらしい。
「今ならなんと!五十万円のところを一万円で売っちゃうよ!さぁ!買った買った!」
レジャーシートの上で、大量のクリスタルを販売しているハチマキを巻いたおじさん。
今の時代では珍しい売り方だ。
買おうか悩んでいる間にクリスタルは次々と売れていき、残り一個になった。
「お嬢さん、買わないのかい?」
クリスタルとにらめっこしていると、おじさんに声をかけられる。
こういう時は思い切りが大事だよね。
「か、買います!」
「まいどあり!」
おじさんに一万円を渡し、最後のクリスタルを受け取った。
帰宅途中、本当に買ってよかったのか……少し後悔する。
五十万円のクリスタルが一万円で売られてたし、安物に色んな効果を持っているとは思えない。
でも、買ってしまったものは仕方がないから、棚の上に飾ってオブジェにしよう。
気を取り直して家へ帰っていると、前から車がすごいスピードでこっちへ走ってきた。
車は止まらず、だんだん迫ってくる。
住宅街で逃げ場がなく、目の前まで迫ってきた。
クリスタルを買わずに帰っていれば、多分こんな目にはあわなかったと思う。
車は、止まらない。
もう駄目だ……と思った瞬間、持っていたクリスタルが激しく輝き、目の前が光で見えなくなる。
しばらくすると光が収まっていき、車は私にじゃなく、壁に激突していた。
どうやら、私は助かったらしい。
地面には、私が持っていたクリスタルが粉々になって落ちていた。
「は……ははは……」
突然の出来事に腰を抜かして、地面に座り込む。
半信半疑だったけど、安物のクリスタルには……ちゃんと効果があった。

7/2/2025, 10:19:23 PM